りんごの木が成るまで

日々感じたこと、想い

想いだけでは組織は回らない

仕事で付き合いがあるとある組織Mがある。

この組織Mにはある強烈な個性を持ったカリスマ的代表Aがいた。

この組織MはAの想いからつくられた組織で、仕事上色々な接点があり、時には議論を交わした。

この組織MはAによってつくられたこともあり、Aに発言権や決定権がほとんどあるため、他の職員はこの組織がどこに向かっているのか理解していなかった。

そう、この組織MはA以外、経営理念や方針を理解しておらず、資料や記録も残していない・・・実質、A個人の延長線のような組織であった。

 

11月末、この組織Mで庶務を担当している職員Kから一本の電話が職場にあった。

「Aの少ない記録を頼りに現在業務に取り組んでいるのですが、この調査をりんごさんの職場でお願いすることはできますか?」

私の仕事はこの組織の業務支援や指導が仕事で、調査を直接手伝うことはしていない。

話を詳しく聞いてみると、どうやらいつも業務を取り仕切っているAが肺がんで倒れて、一時は回復したがまた倒れてしまい、意思の疎通すらままならないそうだ。

私はすぐにKとアポイントを取り、A氏の詳細を確認し、業務の進め方を指導した。

「Aからの指示は基本口頭で、記録がありません。私は庶務担当で、業務の実働はアルバイトやパート職員、そしてAが行っており、人の入れ替えも頻繁だったため、理解している人は今はいません。なので製品を売るための許可や許諾権など私はまったくわかっていません」

Kは静かに話した。

Aは自らの想いや思想を実現するために、あらゆる活動を行ってきたが外に目を向けるばかりで、内のことは疎かになっていたのである。

「今までA中心に仕事が回っていたので、今代理で仕事をしています。ですが、弊社の製品を待っているお客様もいます。その人たちにちゃんと製品を届けられるようにしたいので、りんごさんお力をお貸しください。Aのやり方で間違っているところがあれば指摘していただけたら助かります」

Kは仕事に対し誠実で、しっかり顧客のことを考えることができると感じた。

Aの仕事の取り組み方を聞くと、かなり杜撰な仕事をしていたことが分かった。

よくこれで客商売ができたものだと、半ば呆れながら聞いていた。

 

この話し合い以降、Kや組織Mに対し業務指導・支援を行っている。

私は今回、あれほど威勢がよく議論をしていたAが床に臥して意思疎通もできない状態であることに切ないものを感じた。

と同時に、想いだけでは組織は回らないということを感じた。

組織はつくった人の考え方や思想が、永続的に続いていくカタチだと思う。

その組織した人がたとえ亡くなっても、その人の考え方に後世で賛同できる人たちが入社をして想いを生かしていく。

それが組織だと思う。

しかし、組織Mを作ったAは想いや考え方を仲間としっかり共有しなかったため、彼の想いはもしかしたら今後意図せぬ方向に変化していくかもしれない。

Aの病状が回復した際はしっかり想いをカタチにして、仲間としっかりコミュニケーションをとるように指導したい。

 

私も家族に対する想い、仕事に対する想い・・・様々な“想い”を記録に残し、共有していきたい。

生きた証をこの広い世界のどこかに残せるように。